かわいい戦争
何あのお客さん。
リンカさんを見れば、ここの従業員の質がいいのはすぐわかる。
だってあの男性客以外、皆笑顔だから。
きっとあの2人にだって最高の接客をしたに違いないのに。
なのになんで、あんなえらぶれるの?
「申し訳ございません。少々席を外してもよろしいでしょうか?」
「リンカちゃん、やめときな。あんなのと相手しちゃ痛い目に遭うよ」
「ご心配ありがとうございます。ですがお店を騒がせてしまった以上、誰かが収めなければなりません」
その『誰か』に率先してなるつもりなの?
危険だと承知の上で?
リンカさんはこれまで見せたどの笑顔よりも最上級のものを向け、静かに礼をした。
わたしもひつじくんも、お客さんでさえ、それ以上何も言えなかった。
「……リンカちゃんは、自己犠牲精神が強すぎるんだ」
3人だけとなったテーブル。
沈黙を破ったのはお客さんだった。
「店のために、『あの子』のために、自分の過ちを償うために、毎日身をすり減らして戦ってる。ちょっとは休んでほしいんだけどね」
それが嘘じゃないなら。
真実なら。
璃汰は誤解してる。
その言葉を、真相を、リンカさん自身から聞きたい。
聞かなければ、璃汰を幸せにできない。