かわいい戦争


あなたたちみたいな常識知らずの客に、リンカさんはもったいない。


リンカさんに触らないで。



「よく俺にそんなこと言えるな?俺は首長のむす……」


「偽名を(カタ)るのはやめて。あなたが首長の息子じゃないのは知ってるんだから!」


「!?」



目ん玉をまん丸にして動揺してるのが何よりの証拠。

言い逃れはできない。



「お店を騙して迷惑かけてることがわからないんですか?大切にもてなされたいなら、最低限のマナーは守ってください!」



リタの卒業ライブでは怒れなかった。


やっと、言えたよ。



胸の内側に残ってたしこりを取り除けたようで、すっきりした。



「てめぇ、何様なんだよ!!」



逆上した龍司という男性が腰を上げ、テーブル上に置いてあったお酒のたっぷり入ったボトルを掴んだ。


右腕を大きく振り上げる。



あのボトルで殴られ……!?




咄嗟に俯き、両腕で頭を守る。





――ガッシャン……!




思い切り強く、ボトルがぶつかった音。


次いで、周囲の悲鳴。

腕に飛び散る、冷たい粒。



……いつまで経っても、痛みはやってこない。



恐る恐る顔を上げていく。


目の前にはひとつの影があった。



ウェイター?

……ううん、違う。



斜め下でひとつにしてる長髪は。


ピンクパープルから毛先につれてラズベリー色になる、あのグラデーションの髪色は。



「ガラスいて~し、酒冷て~し、まじ最悪。……だけど、ココいい酒使ってんね?うま」


「……み、らい、くん……?」



< 174 / 356 >

この作品をシェア

pagetop