かわいい戦争
あなたたちみたいな常識知らずの客に、リンカさんはもったいない。
リンカさんに触らないで。
「よく俺にそんなこと言えるな?俺は首長のむす……」
「偽名を騙るのはやめて。あなたが首長の息子じゃないのは知ってるんだから!」
「!?」
目ん玉をまん丸にして動揺してるのが何よりの証拠。
言い逃れはできない。
「お店を騙して迷惑かけてることがわからないんですか?大切にもてなされたいなら、最低限のマナーは守ってください!」
リタの卒業ライブでは怒れなかった。
やっと、言えたよ。
胸の内側に残ってたしこりを取り除けたようで、すっきりした。
「てめぇ、何様なんだよ!!」
逆上した龍司という男性が腰を上げ、テーブル上に置いてあったお酒のたっぷり入ったボトルを掴んだ。
右腕を大きく振り上げる。
あのボトルで殴られ……!?
咄嗟に俯き、両腕で頭を守る。
――ガッシャン……!
思い切り強く、ボトルがぶつかった音。
次いで、周囲の悲鳴。
腕に飛び散る、冷たい粒。
……いつまで経っても、痛みはやってこない。
恐る恐る顔を上げていく。
目の前にはひとつの影があった。
ウェイター?
……ううん、違う。
斜め下でひとつにしてる長髪は。
ピンクパープルから毛先につれてラズベリー色になる、あのグラデーションの髪色は。
「ガラスいて~し、酒冷て~し、まじ最悪。……だけど、ココいい酒使ってんね?うま」
「……み、らい、くん……?」