かわいい戦争


こんなときになんで涙がこみ上げてくるんだろう。


瞬きをしたら涙がこぼれそう。



目尻に溜まった涙が落っこちる寸前

人差し指が優しくすくい取った。



「『ごめんね』じゃなくて、違う言葉が聞きたいな~」



焦りと不安から、安心と温情に塗り替わった笑顔。


胸の奥がきゅっと締まって、苦しくなる。



でも、この苦しさは

なぜか甘くて、愛おしい。



「……ありがとう。未來くん、ありがとう……っ」


「うん、どーいたしましてー」



思い返せばいつも、未來くんはわたしを助けてくれていたね。




あぁ、どうしよう。

困ったな。


わたし、未來くんのこと、好きになっちゃうよ。



ううん、きっともう、好き。





「……で、こいつらは何なの~?」



未來くんはわたしのファーショールに付着したガラスの破片を軽く払いながら、おもむろに視線で後ろを突き刺した。


心臓をえぐる感覚は、どんどん電流のような痺れをともなって広がっていく。



未來くんの、殺気。



底知れない禍々しさに畏怖しているのに、不思議とそばを離れたいとは思わない。


わたしの盾になるみたいに守ってくれているからだろうか。


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