かわいい戦争
「お、俺らは……っ」
「やべぇ……こいつ、神雷の……」
男性客は殺気を直に浴びて、それまでの威勢を一瞬にして失った。
目をつけられたら最後、無事では済まされない。
たとえ相手が大人だろうが容赦しない。
それが最強で最凶の暴走族――神雷。
「お前らこそ何様だよ」
未來くんが男性客側に一歩近づいた。
たったの一歩でも、男性客を震え上がらすのに十分だった。
「なあ、こーんなかわいい子たちを傷つけてもいい奴ってどんな奴?どっかのお偉いさんならやってもいいわけ?客なら何したっていいんだ?」
「ひっ……!」
「違ぇよな~?」
わたしからじゃ、未來くんの背中越しに顔面蒼白の男性客しか見えない。
だけど、想像つく。
未來くんが今どんな眼をしてるのか。
「考えなくてもわかんだろ?いい歳した大人が駄々こねてんじゃね〜よ」
声だけでわかる。
本気で脅してる。
「てことで、あとよろしく~」
殺伐とした声色が朗らかになった。
今の今まで脅してたのに……!
よろしくってどういうこと!?
誰に言ってるの!?
「了解!」
状況についていけない周りをよそに、ソファーの後ろから承諾が返ってきた。
こ、この声って……!?
「強制退場でいいんだよな?」
ソファーの後ろからぴょこっと現れたのは……
「ゆ、勇祐くん!?」
なんで勇祐くんまでいるの!?