かわいい戦争
「……やっぱり“あの人”の子ね。すごく、似てるわ」
呟きが聞こえていないフリをして、マスクとスカジャンを身につけた。
うん、やっぱこっちのほうがしっくりくる!
着替え終わるとタイミングよくノックが響いた。
「着替え、終わった?」
「うん、終わったよ!」
ひつじくんに返事をして、ドレスを入れた袋を持った。
「リンカさん、ありがとうございました。お仕事頑張ってください」
「ええ、こちらこそありがとう」
璃汰と早く仲直りできるといいですね。
と、付け足そうとしたけれど、やめた。
そう期待することは、璃汰のためじゃないよね。
軽くペコリとお辞儀をして、ロッカールームをあとにした。
最後に見たリンカさんは、涙ぐみながら微笑んでいた。
「カイリー、行こ」
「うんっ」
「3人は、バイクで来たんだっけ?」
「そーだよー。裏口に停めてある」
「そういやウェイターの服装でバイク走らせても、あんま注目されなかったよな」
「お前らはヘルメットしてたからな。俺はすげー注目されてたぜ?」
「いやヘルメットしろよ」
「リッキーのアホ面に、皆、笑ってたんじゃない?」
「あぁ?この顔のどこがアホ面なんだよ。視力わりーんじゃねぇの?」
「利希は顔しか取り柄ないもんな~?」
喧嘩腰の会話に安心を覚えるようになってしまった。
随分とこの環境に慣れちゃったなぁ。