かわいい戦争
あやしい前章
《――注目のアイドルが、ついにメジャーデビュー決定!!》
「あっ、リタちゃんだ!」
「ほんとだ!めっちゃかわいい!」
放課後の賑やかな繁華街。
ひと際注目を浴びている大型ビジョン。
どんっと大きく、きらびやかに、それでいてしっかりと特集を組んで宣伝している。
興味を引かれて、帰路の途中だが足を止めてみた。
その映像の周辺には、推してる例の人物を目立つように、人物が表紙を飾ってるティーン向けのファッション雑誌「tulle」や、所属しているインディーズのガールズアイドルグループ「オンナノコ*ソルジャー」のCDをズラリと並べている。
まあ、デビュー自体は「オンナノコ*ソルジャー」としてではなく、ソロらしいのだけれど。
「デビューするんだね!」
「デビュー曲どんなだろ!楽しみ!」
元から好きだったのか、宣伝力にまんまとしてやられたのか。
わたしと同じ制服を着た2人組の女の子が、きゃっきゃと騒ぎ立てていた。
「デビュー、ね……」
ちっぽけな独白は、顔の下半分を覆っている大きめのマスクによって、誰の耳にも届かない。