かわいい戦争
友達に心配されながらも別れ、カバン片手に教室をあとにする。
お店の手伝いをしてたら気が紛れるかも。
今日は特に用事はないし、久し振りに手伝いに専念できる!
ため息ばかりついていてもしょうがない。
早く昨日のことは忘れて、ちゃんとした告白ができるように頑張らなくちゃ。
「頑張るぞっ!」
「何を頑張るの~?」
「まずは手伝いから……」
……って、え?
オレンジ色に染まる昇降口。
下駄箱から取り出したスニーカーを地面に落としてしまった。
「み、み、未來くん!?」
「やほ~。海鈴ちゃん、今帰り?」
すぐ横に未來くんの笑みがあり、腰が抜けそうになる。
なんとか足で踏ん張れたのは、ちょうど今気合いを入れたおかげに過ぎない。
会っただけで耳裏に赤みが帯びる。
じんじん痛むくらい熱い。
「カイリー、今日、来る?」
「は?お前もたまり場来んの?いても邪魔なんだけど」
「昨日は、無理やり、来させたくせに」
「昨日は昨日、今日は今日だろ」
未來くんの後ろには、ひつじくんと天兒さんもいた。
好きな人のことでいっぱいいっぱいで、2人の存在に気づかないなんて……ほんと重症すぎ。
「利希の言うことは気にしないで、今日も遊びにおいでよ」
未來くん、ずるい。
ね?と甘く誘う言い方も、一段と優しい表情も。
昨日の『好き』をからかってるようで。
なのにまんまとときめいて。
わたしを弄んでるんでしょ。