かわいい戦争
◇
まだドキドキ鳴ってる。
物音ひとつない部屋。
今日も体調のいいお母さんはお父さんと既にお店で忙しなく働いているため、家にはわたし1人だけ。
だから余計に心臓の音がクリアに聞こえてくる。
気を抜いたらすぐに未來くんのことを考えてしまう。
このままじゃ手伝いもまともにできやしない。
ダメダメ!
お店のことで頭を埋め尽そう。
「醤油ラーメン、塩ラーメン、味噌ラーメン、豚骨ラーメン……」
ブツブツ唱えながら、普段着に着替える。今日はフード付きのパーカーにしてみよう。
そういえば昨日未來くんが注文したのは醤油ラーメンだったな。
……あーほら、油断した。
なんでこんなに好きになっちゃったんだろう。
もう!全部未來くんのせいだ!!
1人でいるから考えすぎちゃうんだ。
さっさと手伝いに行こう。手伝いは楽しいからきっと大丈夫。
あとはエプロンを着るだけ。
「エプロン……エプロン……」
クローゼット内を探してハッとする。
そうだ、洗濯したんだった。
今朝干したからリビングかベランダにあるはず。
スマホだけ持って自分の部屋を出た。