かわいい戦争




それから夏休みに入り、璃汰が街でスカウトされた。


インディーズのアイドルグループに加入したことを、その日に電話で教えてくれた。



『アイドルって皆に愛されるでしょ?だからちょうどいいって思ったの。自分の居場所は、自力で手に入れてみせる』



璃汰らしい理由だ。

真っ直ぐでかっこいい。


芸名「リタ」として「オンナノコ*ソルジャー」の一員になった璃汰を、応援するしかできないのがもどかしかった。




『でも大丈夫?アイドルって大変なんでしょ?勉強もこれから難しくなるだろうし……』


『平気よ。あたしが今まで以上に努力すればいいだけでしょ』


『……だけど心配だな。ファンの中には危ない人もたまにいるって聞いたよ?ニュースでもよく芸能人がストーカーされたとか、過激なファンに刺されたとか報道してるし。アイドルなんて特にそういうの多そう……』


『知ってる?そういうの偏見って言うのよ』


『う……。わ、わかってるけど……璃汰が傷つくのはやだよ……』


『あたしだって嫌よ。だから愛される努力をするの。努力は必ずしも報われないけれど、努力しなきゃ報われるものも報われない。それならあたしは傷つくのを怖がってるより、傷つくのを覚悟で戦うわ』




きっと、彼女の世界は、かわいくなくちゃいけない。


それが彼女の生きる術。

どれだけ生きづらくても、輝き続けようとする。



『それに、万が一危ない目に遭ったり傷ついたりしたら、海鈴が守ってくれるでしょ?』


『う、うん!!守る!全力で守るよ!!』



あった!見つけた!

応援以外にできること。


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