かわいい戦争
元々得意だった水泳を習慣づけた頃、おじいちゃんが入院することになった。腰を痛めてしまったらしい。
おじいちゃんの体を案じてお父さんが仕事を辞め、2代目としてお店を回していく決心をした。
少しでも力になれればと、わたしが提案した出前サービスのおかげで、足腰が強くなり体力もついた。ちゃっかり体重も落ちていいこと尽くし。
お店の手伝いを終えてから、学校の宿題のあとにメイクの勉強。
あらゆるサイトやメイク動画、愛読してる雑誌「tulle」を参考に、コスメ道具やメイク方法を1つずつ学んでいった。
メイクが奥が深くて、勉強することが多すぎる。
女の子って難しい。
せめて目元だけでもリタに寄せられないかな。異母姉妹なんだから、ちょっとは似せられるはず!……たぶん。
ダイエットとメイクの勉強の成果が出てきたのは、傷んでぱさついた髪の毛をばっさり切った中学2年生の冬頃。
そのときには、アイドル・リタはグループ内で1、2を争う人気を誇っていた。
友達によく『痩せた?』『かわいくなったね!』と褒められる反面、わたしをよく思わない人も当然いて。
『調子に乗ってる』
『須夜崎さんに気に入られたいんじゃない?』
『金魚の糞』
陰口を叩かれては、落ち込んだ。
3年生になると、わたしがマスクを付け始めたことで陰口が激しくなったけれど
璃汰との関係にためらい、わたし自身を直接攻撃してくることはなかったので恐怖心はだんだん消えていった。
中学はメイクもアクセサリーも禁止だった。
だけど高校は自由。
だからわたしは、お父さんのスカジャンと璃汰からもらったチョーカーで着飾って、今日もオリジナルの“かわいい”を作る。
璃汰のかわいさには敵わなくても。
量産型の“かわいい”だって武器になる。
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