かわいい戦争
嫌だよ。
負けたくない。
理不尽な現実を受け入れたくない。
「わたしが、助けに行くよ」
『は?なに言って……』
「放課後はレッスンがあるでしょ?それってデビューに向けた大事なレッスンじゃないの?」
『それは、そう、だけど……』
「知ってるよ。毎日頑張りすぎなくらい頑張ってること。今日だって本当はレッスンに行きたいんでしょ?」
返事がない。
それはつまり肯定。
メジャーデビューが決まったからこそ、居場所を確実にするために自分を追い込んでる。
いくら努力しても満足しないで貪欲に高みを目指す。
いつも全力な璃汰だから、力になりたいんだよ。
「わたしが璃汰を外に連れ出す。助けに行く!」
たったひとりで怒りも憂いも耐えていたんだろう。
心細かっただろうに。
わたしに連絡してこなかったのは、ニュースにわたしも関わっていたからなんじゃないのかな。
気にしないでよ。
もっと頼って。
わたしはとても弱くて非力だけれど、璃汰の味方でしょう?
『……早く、』
「え?」
『来るなら早く来なさいよね!』
キンと耳に響いた高音が、なぜだか心地いい。
「うん、すぐ行く!待ってて!!」