かわいい戦争
ときめく正義
灰をかぶった雲が、漂う。
さっきまで眩しかった空は、いつの間にか薄暗く陰っていた。
いつ雨が降り出してもおかしくない。
雨が降ってもマスコミはいなくならないのかな。
いつまで璃汰の家に押しかけるつもりなんだろう。
……ううん、マスコミなんか関係ないよね。
璃汰を助け出せれば、それでいい!
「璃汰の家は……西!」
家の中にお邪魔したことはないけれど、中学のときは何度か家まで送ったことがある。
若干古びたアパートの2階。
そこで璃汰は独り、待ってる。
わたしを、待ってる!
急いで西方向に駆け出した。
曇天模様でも活気づいてる繁華街の人波を縫って、ショートカットして路地に入る。
細い路地を曲がり、大通りに出た。
一気に人気の少なくなった大通りは、繁華街のすぐ近くだというのに人や車の通行がまばらで、街灯も1つもないためどんよりしている。
この大通りを真っ直ぐ進んだ先には、いくつもの倉庫が立ち並んでいる。不良がたまにたむろしている危険な地帯だ。
真逆に進むと、だんだんと人の往来が多くなり、住宅街が広がる。
その住宅街の中に、璃汰の住むアパートがある。