かわいい戦争
「ほ、本当に璃汰じゃねぇの!?」
「違います。別人です」
「まじか……」
低身長の男の子の驚きっぷりに笑っちゃいそうになったけど、我慢。
やっとわたしの話を聞いてくれた。
「よく見りゃそんなかわいくねーな」
「女の子は皆、かわいいに決まってんだろ~?」
高身長の男の子にげんこつを食らわすと、学ラン肩かけ男はニコッと軽薄そうな笑みを浮かべた。
何とも胡散臭い。
「なんだ、璃汰じゃねーのか」
どうりで服装が違うわけだ、と。
高身長の男の子は妙に物分かりよく、わたしのそばを離れると。
「じゃあお前、帰っていいぞ。つーか、帰れ」
しっしっと手を払い、ホールの左横の扉の向こうに行ってしまった。
これでもわたし、被害者なんだけどなぁ。扱いひどくない?
「あいつはほんと……ごめんな?」
「あ、いえ、」
謝ってくれた学ラン肩かけ男も、ぶっちゃけ言葉だけで、反省の色はあまり窺えなかった。
まあ、それもそうか。
この人はわたしを璃汰と見間違ってないもんね。
急に今までより気まずさが増してきた。
わたしはここにいちゃいけない。
本能でそう感じた。