かわいい戦争
「み、皆が一緒なら心強いです!」
「そりゃそーだろ。俺つえーし」
「さっきまで行く気なかったくせしてよく言うぜ」
「璃汰ちゃんちってどこにあるの~?」
難癖をつける勇祐くんに天兒さんの言いがかりが上乗せする寸前、未來くんがさらっと介入して防いだ。
「この先にあるアパートの2階だよ。放課後はレッスンがあるから、璃汰をマスコミにバレないよう連れ出さなくちゃいけないの」
「それなら早く行かね~と」
「カイリー、急ご」
「うん!こっちだよ、ついてきて!」
「俺に指図すんじゃ……」
「はいはい、黙ってついてこうな?俺たちは場所がわかんねぇんだからさ。ガキじゃあるまいし、それくらいできるだろ!」
皆を先導しながらアスファルトを蹴る。
足を休ませる暇なく、全力で突き進んでいく。
走れ。
走れ。
もっと速く!
走って、走って、あの子の元まで。
出前やらダイエットやらで鍛えた足腰を、今活かさなくてどうするの。
体力は人一倍あるんだから!
足音が少しずつリズムを速めていく。
マスクの中に息がこもって苦しい。
けれどサメが動いていないと死んでしまうように、手足を停止させるわけにはいかなかった。