かわいい戦争
◇
――カシャッ。
――カシャッ。
「リタさーん!」
「出てきてくださいよ!」
「おいカメラ、ずっと窓映しとけよ。いつリタが顔出すかわかんねぇぞ」
「キャバクラに出入りしてたのは本当なんですかー!?」
フラッシュをたいたカメラ。
アパート前に集まる人々の大声。
アパート近くに到着し、物陰から覗いて見えたのは
のどかな住宅街の雰囲気をぶち壊しにする騒々しさ。
近所迷惑を訴える住民がいても無理はない。
「何あれ……」
怖い。
記者やカメラマンは仕事だからやっているんだろうけれど、シャッターを切る度、太い声が響く度、敵に脅かされてるみたいで身の毛がよだつ。
璃汰は朝からこれに耐え、恐怖していたなんて……胸が痛い。
「うっわ」
後ろから天兒さんの呟きが漏れた。
さすがの天兒さんも引いて……
「予想以上にイイ顔してんじゃねーか」
……えっ、そっち!?
「いーねいーね。汚ねー顔がさらに汚くなってやがる。サイコー」
「こいつの感性は一生理解できねぇ……」
勇祐くんに同感。
天兒さんは相変わらず悪趣味だな。