かわいい戦争
「璃汰に何したの!?」
『やだなぁ、そんな心配しないでくださいよ、お友達さん。ただ窓に頭をぶつけただけですよ。ほら、車って揺れるじゃないですか。その反動です、反動』
璃汰はまろんちゃんと車に乗ってるの?
耳をひそめれば、確かにエンジン音が聞こえる。
でも、だからって、今の音を反動のせいだと片付けられない。
『嘘よ!この不良どもがわざと……んっ!』
璃汰の大声が途絶えた。
音がないということは、おそらく口を塞がれたんだ。
「不良どもって?どういうこと!?」
『リタ先輩、お喋りですね』
「璃汰をどうする気なの!?」
ファンの間でも、2人の関係は有名だった。
リタを慕うまろんちゃんを、リタもだんだんかわいがるようになったって。
リタからもらったリボンを毎日欠かさず身につけてた。
いろんな雑誌やライブでだって、リタが大好きって公言してた。
そんなまろんちゃんがどうしてリタを傷つけるの?
『リタ先輩を少し借りるだけです。お友達さんもお仲間なのか知りませんが、不良さんたちには感謝してるんですよ?』
「感謝?」
『はい。彼らがわざわざリタ先輩を外に連れ出してくれたから、あたしたちが手を煩わせることなく攫えたんですから』
「攫うって……何言って……」
『それでは失礼しまーす』
「あ、待って……!!」
一方的に通話が切れた。
どれだけ叫んでも届かない。
「今の電話、璃汰ちゃんから!?」
同じタイミングで通話し終えた未來くんが、狼狽えながら投げかける。