かわいい戦争
好きな人が今、わたしに「好き」って、言った。
わたしには、そう、聞こえた。
都合のいい夢かな?
あるいは理想を詰め込んだ妄想?
雨に打たれる感覚はどう考えても本物で、余計に戸惑っては疑ってしまう。
本当に?
本当の本当に、未來くんの好きな人はわたし?
誰かと間違えてない?
わたしで合ってる?
……未來くんに、甘えてもいいの?
「……嘘じゃ、ない?」
「嘘じゃないよ」
「迷惑じゃない?」
「まさか」
「すっぴんかわいくないよ?」
「かわいいよ。世界で一番かわいい」
穏やかにほころんだ笑みは、間違いなく本心だと物語るには十分すぎて。
雨空の下でもひと際眩しい。
「今、かわいいって思うのは、海鈴ちゃんだけだよ」
さっきの続き。
今言うのは、ずるいよ。
これがわたしの妄想ではないなら。
抱きしめ返してもいい?
「……好き、」
今告白すべき状況じゃないのは、頭ではよくわかってる。
だけど口からあっけなく溢れた。
ほとんど無意識だった。
「未來くんのことが、好き」
「うん。俺も、大好きだよ」
しがみつくように未來くんに抱き着いた。
どうしてこんなに胸が苦しくてたまらないんだろう。
「たぶんね、俺のほうが先に好きになったよ」
「え?」
「今日みたいに雨の中璃汰ちゃんのために体張って守ってたあのときから、海鈴ちゃんのことが気になってた」