かわいい戦争
『気に入られたんじゃね~?』
「あれは面白がって言ったんじゃ……」
「違うよ。あれは俺の気持ちだったんだよ」
あのセリフは適当でも憶測でもなく、本音?
「利希もそーなんじゃね~かな~とは思ったけどね。でも気に入ったのは俺もおんなじだった。海鈴ちゃんのことをもっと知りたかった」
照れ隠しに左目下のほくろを掻きながら、伏し目がちにわたしを映す。
金色の瞳が真っ直ぐすぎて、感情を丸ごと見透かしていそう。
「好きだよ」
心地いい声音も、真っ直ぐ。
もう一回至近距離で「大好き」と囁かれる。
心拍数が上昇し、ときめきどころじゃない。
「俺たちといたらまた傷ついて、泣いちゃうかもしれない。だけど海鈴ちゃんが璃汰ちゃんを守るなら、俺が海鈴ちゃんを守るから。泣きたいときはそばにいるから……だから、俺のそばにいるのをあきらめないで。今までのことを全部自分のせいにしないで」
昨日はわたしが未來くんにとって唯一無二の“誰か”になりたかった。
けれど今日は、未來くんがわたしの“誰か”になろうとしてる。
わたしに未來くんはもったいない。つり合ってない。
でも恋をしてしまった。
そばにいたい。
そばにいてほしい。
そう願ったことを、取り下げられない。
未來くんを好きな女の子はたくさんいるだろう。その子たちは怒って、わたしを否定するかもしれない。
優しくないよね。わがままだよね。わかってる。
それでいい。
わたしはわたしをないがしろにしたくない。