かわいい戦争
「俺と、俺たちと、一緒に戦おう?」
傷ついてもいい。
泣いてもいい。
未來くんのそばなら何も怖くない。
「っ、うん……!」
迷いなく頷いた。
パンダになってるであろう目元に、未來くんの唇がいたずらに触れる。
「みみみみ未來くん!?!?」
い、い、今上瞼にき、き、き、キスし……!?
あからさまに赤面状態で取り乱すわたしを、軽々と抱き上げられた。
「え……ええっ!?」
急になんで!?
これっていわゆるお姫さま抱っこだよね!?
突拍子もない行動ばかりで、両思い早々ドキドキしすぎて心臓が爆発しちゃいそう……!!
「あいつらと合流して、助けに行こ~!」
「未來くん、昨日キャバクラでボトルの破片が左腕に刺さってたよね?腕、痛くないの?」
「もう治ったからヘーキ」
「治った!?」
血だらけだったよね!?
無理してない?
「嘘!」
「ほーんと。元々大した傷じゃなかったしね~」
ほら、とわたしを抱えた状態でクルリと一回転してみせた。
確かに平気そう。よかったぁ。
暴走族ってよく喧嘩するし、ああいう傷も日常茶飯事なのかな。
……って!
だからってなぜお姫さま抱っこするの!?
「で、でも、わたし自分で歩けるよ……!」
だから下ろしてほしい!
恥ずかしいし、何よりわたし重たいでしょ?
「彼氏に甘えてくんね~の?」
うっ。
その上目遣いはわざとですか。
「そ、そういう言い方……卑怯、だよ」
たどたどしく未來くんに腕を回した。
緊張と羞恥で脈が速くなる。
未來くんにも伝わっちゃうよ。
「そんじゃ~飛ばすからしっかり掴まっててね~」
未來くんは愛しそうに破顔すると、空き家の裏口から慎重に通り、路地裏を颯爽と駆け抜けていった。