かわいい戦争

は、速い!!

風を切るって、こういうことを言うのだろうか。



気持ちいい。

雨がさっきまでの自責を洗い流し、風が綺麗さっぱり乾かして、まっさらにしてくれる。



チラリと見た未來くんの表情に、後悔も諦念(テイネン)も存在しない。


そこに灯るのは、熱意と信念。



……そうだ、わたしにも在る。

わたしの強さが。覚悟が。


忘れたらいけない。


自分で決めたんだから。



弱さを嘆くのはいつでもできる。


また守れないかもしれなくても、守ることをやめたらそれこそ味方失格だ。




『あたしのものだって証だから、それ』



首を飾ってるチョーカーの鈴が、ゆらり、揺らめく。


思わず唇で弧を描いた。



「そーそー。そーゆー笑顔が見たかったんだよ」


「!」


「辛気臭い顔で助けに行っても、璃汰ちゃんは安心しないっしょ?」



目が合った未來くんも、含み笑いしていた。


もしかしてこのお姫さま抱っこも、わたしを笑顔にするため?



「そうだね。暗くなってちゃダメだよね」



ただでさえ璃汰は辛いはずなのに、よりいっそう不安にさせるところだった。


わたしは璃汰の不安を取り除きたい。

傷を増やしたくない。


それなら強気に行かなくちゃ。


わたしの笑顔を見たら、璃汰が「大丈夫だ」って安堵できるように。


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