かわいい戦争



昨日までリタのデビューを嬉々として宣伝していた大型ビジョンでは、リタのドラマ降板や風俗への出入りなど印象の悪いニュースをけたたましく流していた。


ちらほらと通行人が立ち止まって観てる。




「リタちゃん、やばくない?」

「ドラマ楽しみにしてたのにな~」

「キャバだったの!?」

「なんかショック」

「裏切られた」




言い返してやりたい衝動をぐっと抑え込んだ。


今は璃汰を助けるのが先だ!



大型ビジョン前を避け、閑散とした裏道を走っていく。


しばらくの間うっすらリタのニュースが聞こえていた。腸が煮えくり返りそうだったが、人嫌いの野良猫のうがいてるような鳴き声で和らいだ。




少しして人影が全く見当たらなくなり、それに合わせて空気の質がやや硬く強張っていく。


遠目に大きな建物を見つけた。



神雷の洋館だ。



反対方向から天兒さん、勇祐くん、ひつじくんが集まってくる。


洋館前で落ち合った。



「お前ら、なんちゅう登場の仕方だよ」



若干呼吸を乱した勇祐くんにジト目で妬まれ、一拍遅れてハッとなる。


あっ!お姫さま抱っこ!!




「み、未來くん!お、おろ、下ろして!」


「え~」


「お願い!!」


「しょーがないなー」




渋々腕を下げ、わたしを離してくれた。


久し振りに地面に足をつけた気がする。

実際は5分ほどなんだろうけど。


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