かわいい戦争
恐怖。
その2文字には収まらない何かが、確かにあった。
「リッキー、珍しい」
「すっげ~やる気じゃん」
「てっきりまためんどいっつって洋館の中でくつろぎだすかと思ってたぜ」
声すら上げられないわたしとは別の意味で、ひつじくんと未來くんと勇祐くんはびっくりしていた。
よく悠々としていられるなぁ。
慣れてる人たちはすごい。
「お前もちゃんと璃汰を心配し……」
「あの車、俺を轢きかけたんだ。ぶっ殺さなきゃ気が済まねぇ!」
「……てたわけじゃねぇんだな」
「避けたら避けたで、璃汰を攫って」
「あ、やっぱり心配……」
「俺の足をまた轢きそうになったんだぜ?あの車まじ許さねぇ。ぶっ潰す」
「……だよな。お前が心配なんかしねぇよな。俺は何を期待してたんだ。ハハハ」
栗色の瞳からハイライトが消えていく。
璃汰より自分優先なんですね。
どんな理由であれ、天兒さんがいたほうが戦力的に心強い。
「下っ端総動員であの車を探すぞ」
「下っ端は全員、パトロールに出払ってる」
「んなもん中止だ。死に物狂いで車探せって連絡しろ」
ひつじくんに下した命令に、ふと想起した。
昨日の幸珀さんの紹介。
『昔はいろいろあって最終的には副総長になったけど、今はしょっぼい探偵やってんの。どうせ役に立たないとは思うけど、困ったことがあったら頼ってやって』