かわいい戦争
改めてもう一度皆でお礼を告げると、電話が切れた。
画面にはいくつもの雨粒が垂れていた。
「これで、パトロールは中止しなくても、よくなった」
「だな!下っ端たちがパトロールし終える前に片付けちまおうぜ!」
「そういえばあっちは何人いるんだろうね~」
「関係ねーよ。全員叩きのめすだけだ」
雨は止まない。
厚い雲は重なる一方。
じっとりとした独特な感触が、寒さをも招いてくる。
璃汰の眼の色によく似た空模様だけど、やっぱり違うね。璃汰の眼のほうがずっとずっと綺麗だ。
今日の空を綺麗だと思えないのは、どこにも輝きがないせい。
光がないと、わたしの気持ちも曇ったままだよ。
「わわっ!?」
突然何かをかぶせられた。
「ほい、俺のヘルメット」
「ありがとう……」
未來くんはヘルメットを装着してくれただけでなく、バイクにも乗せてくれた。
さすがに甘やかされすぎ……?
でも未來くんの破顔を見たら、断れないんだよね。
「ちゃんと掴まっててね」
「うん!」
後ろから未來くんにしがみつけば、エンジン音が轟いだ。
他の皆もバイクを鳴らしてる。
「行くぜ!!」
天兒さんの雄叫びを合図に発進した。
脳裏でリタの卒業ライブで聴いた『ハピネスデー』が何度も再生されていた。