かわいい戦争
わたしもお父さんも、お母さんのことが大好きで。
だからこそ、何に代えても支えたいんだ。
家族を守りたいって思うのは、わたしにとって、至極自然のことだった。
「お母さんはゆっくりしてて。わたし、お店の手伝いしてくるね」
「ありがとう、海鈴」
お母さんに毛布をかけ直してあげる。
買ってきた食材を冷蔵庫に入れてから、制服から普段着に着替えた。
若干汚れてしまったエプロンを身に纏い、また家からお店へ降りていく。
「はい、おまちどおさま」
お店に戻ってきたらちょうど、カウンター席に座るお客さんに料理を提供していた。
こってり豚骨ラーメンだ。
「ここのラーメン、クセになるんだよなぁ」
「ははっ、ありがとうございます」
ここは、「素野 真汰のお店」というちょっと風変わりな名前のラーメン屋。
素野真汰とは、このお店を作ったわたしのおじいちゃんの名前。
おじいちゃんが腰を痛めて入院して以来、お父さんが2代目として切り盛りしている。
味には定評があり、常連さんも多い。
繁華街の人気のお店のひとつだ。
「こんちはー」
ガラガラ、と扉が開く。
お客さんだ。
「いらっしゃいませー!」
あ、あのお客さん、この前も来てた。