かわいい戦争
《10代を中心に人気急上昇中の「オンナノコ*ソルジャー」のセンターを務めた、女の子の理想のかわいいを詰め込んだと噂の美少女、リタ!》
《デビュー間近の彼女の魅力に迫る!》
リタのかわいさなんて、とっくに知ってるよ。
それでもまだ興味はあったが、再び歩き始めた。
周囲には、足を止めて大型ビジョンに夢中になってる人たちが多くいたことに気づき、内心圧倒された。
「かわいいって、ほんと、正義だなあ」
雑踏をかき分けながら進んでいく。
ドンッ!
突然、向かい側から歩いてきた男性と肩がぶつかった。
「あ、すみませ……」
「はい、はい。すんません。今ちょうどネタを探してる最中でして……」
わたしの咄嗟の謝罪を無視どころか、あっちは謝る気すらない。ていうか、肩がぶつかったことにも気づいていないんじゃないか、あれ。
忙しそうに電話していた。
30か40代くらいだったな。仕事が大変なんだろうな。
「チッ。うっせー上司だな」
電話が切れた途端、口が悪くなったことになど、先を行くわたしには知る由もない。
「どっかにいいネタ、落ちてねぇかな」