かわいい戦争
するり、と肩から白い手が沈む。
グレーの眼がスマホの奥のパーマがかった黒髪をなぞると、ふてぶてしく口の端をゆるめた。
「少なくとも彼らは、あたしの知る“暴走族”じゃなかったんです。威圧感はすごいし喧嘩もしてるけど、どこまでも自由で強くて……かっこよかった。記事ではファンを甚振っていたと記されていましたが、あれは半分正解で半分間違いです。実はあたし、ストーカーされていて。困っていたら彼らが助けてくれたんです』
『そうだったんだ!』
『ストーカー!?』
『そんなことする奴はファンじゃない』
『その暴走族イケメンかよ』
『ヒーローみたい!』
「ふふっ。そうね、まさしくヒーローだわ。……もちろん暴走族全てがヒーローみたいとは限らないですし、彼らとだって相容れないところも当然ある。……けど、とても頼りになる存在です。友達かと聞かれたらわからない。でも、もし、彼らがピンチのときは助けに行きます」
冷やかしたそうに一笑する天兒さんを始め、勇祐くんと未來くんとひつじくんも照れ臭そうにしていた。
「あたしは彼らと出会ったことを後悔していません。魅了されたのがたまたま暴走族だっただけですから」
魅了させる立場だった璃汰が
初めて魅了された存在。
それが、神雷。
『だから君みたいな“いい子”は、神雷とはせめて関わるだけにしときな。居座っても、傷つくだけだぜ?』
“悪い子”の巣窟でも、不良の世界に傷ついても。
その痛みに意味がないとしても。
出会えたから芽生えたものがあった。
苦しいだけじゃなかった。