かわいい戦争
心配だよ。
ただでさえ璃汰は頑張りすぎちゃうところがあるのに。
「りったん、ウチで診てもらう?」
論争から一抜けしてきたひつじくんも、璃汰が心配なんだ。
津上病院ならここからも近いし、璃汰のことをちゃんと診察してもらえる。
「うんうん、そのほうがいいよ!」
「いやあたしは……」
「レッスンに行くのはそのあと!ね!?」
前のめりになってごり押しする。
反対は認めません!
とことん食い下がれば、璃汰は押し負けて観念した。
「あっ、あたしもついて……」
「まろんは先にレッスンに行きなさい」
「で、でも、あたしのせいだし……!」
「頑張るんじゃなかったの?1秒たりとも無駄にはできないわよ」
まろんちゃんにだけは心配することも許さない。
厳しいけどそれが罰であり、璃汰なりの優しさ。
赤いリボンを渡す日はいつになるだろうか。
「じゃあ、病院行こっか」
区切りをつけたタイミングで、まろんちゃんがマネージャーに電話して迎えを頼んだのが聞こえた。
そのくぐもった声色は熱っぽくて、強がっているようだった。
「……あ、記者の人は……」
視界の端っこに留まって思い出した。
まだひつじくんに蹴られた横腹が痛いのかな。
「ほっとけ」
「カメラの弁償求められても困るしな」
天兒さんと勇祐くんがあっさり素通りした。
記者に目をくれることもないんだね。
どうしてこんなときだけ2人とも息ぴったりなんだろう。