かわいい戦争
記者と不良たちを置き去りにして、倉庫を出た。
雨上がりの雲の奥からおぼろげな月明かりが照らす。
まん丸のお月さまが淡く透けていた。
雨の匂いがする。
地面にできた水たまりに靴裏を浸した。
「あ、あの!」
勇祐くんのバイクに璃汰を乗せたら、恐る恐るまろんちゃんが声をかけた。
「あたしが言えたことじゃないけど……ほ、本当に、すみませんでした……!か、体……安静に、してください」
「あたしのことを気遣ってる暇なんかないでしょ」
小さくなっていく語尾にかぶせて、璃汰はわざときつい言葉を選んだ。
案じていないでレッスンに励みなさい。
そんな副音声がまろんちゃんにも聞こえただろうか。
「海鈴ちゃん、はいど~ぞ」
「あ、ありがと、未來くん」
不器用な2人に向けていた意識を、手元へ移す。
借りたヘルメットをかぶり、未來くんのバイクにまたがる。
ブオンブオン!!
4台のバイクがエンジン音をかき鳴らした。
帰る準備は万端だ。
「また海鈴ちゃんち寄ろうかな~」
鼻歌混じりに呟いた未來くんにすり寄るようにしがみつく。
それもいいかもしれないね。
昨日は神雷がお店に来るのは不安だったけど、今日は微塵も感じない。
今度は璃汰も一緒に楽しく食べたいね。
きっと今日のラーメンは格別に美味しい。