かわいい戦争


本来ならデビュー日はクリスマスだった。


例のスキャンダルが原因でデビュー日がさらに延び、最悪来年になりそうだった。



しかし、180度一変した。

きっかけは、あのライブ配信。



配信直後は、リタの評価は覆りはしなかったものの賛否両論だった。


スキャンダルとまとめてニュースにもなり、かなり話題になった。

おまけに神雷の知名度は全国区に知れ渡り、わたしも街ではちょっとした有名人扱いされていた。まあ過去形の時点でお察しの通り、話題の流行は風のように過ぎ去り、今ではごくごく普通の女子高生に戻れたんだけど。


わたしが知らない人に騒がれたり後ろ指さされたりして逃げ回ってる間にも、璃汰は努力し、実績を積んだ。だんだんとファンを始めファン以外の人の心も掴み、良い方向へと転じていった。


結果、スキャンダルが流出する前よりもファンが増え、デビュー日を早める要望がたくさん届くようになったらしい。



そうして約半年も早くデビューを迎えることになった。



1時間後、あのステージで

璃汰は夢をひとつ叶えるんだね。



歌ありトークありのイベントを楽しみにしてきた人たちが、同じ時間、同じ場所に集まって心待ちにしてる。


そういえば同じ班の友達も観に行くって言ってたっけ。


あぁ、感慨深いな。
嬉しいな。


今朝からドキドキが止まらないよ。




「こんなに混雑してるんじゃ、はぐれないよ~にしないとね」


「……え?」


「ね?」


「え、あ、……え!?」




未來くんが背中を丸めて、ひらひらと手のひらをアピールしてくる。


こ、これは……。



ごくり、と生唾を飲み込む。

おずおずと大きな手のひらに自分の手を重ねた。



こういうこと、だよね……?

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