かわいい戦争
思わず顔を背ける。
袖をまくったスカジャンの背に刺繍された白鳥も赤らんでるに違いない。
「……あれ?」
ちょうど視線を向けた先に、見知った人影を見つけた。
あの人は――。
ピコンッ♪
わたしのスマホからだ。
新着の通知は、璃汰からのメッセージだった。
『今すぐ控室に来て』
イベント開始までもう少しなのにどうしたんだろう。
何かあったのかな。
『控室ってわたしも入れるの?』
『スタッフには言っておいたから』
『わかった!今行くね!』
お姫さまからの指令には逆らえない。
逆らう気もない。
あの子のために今日も走……
「璃汰に呼ばれたからちょっと控室に行ってくるね」
……ろうとしたら、未來くんの手がぎゅっと強まった。
「俺も行くよ」
「未來くん……」
「僕もりったんに会って、頑張れって伝えたい」
「んじゃあ俺も行く!」
「俺も」
「……利希が自分から言うなんて珍しいな。空から槍が降るんじゃねぇか?」
「控室っつーことは中だろ?エアコンきいてそーじゃん」
「涼みてぇだけかよ!!」
相も変わらない神雷の陽気な雰囲気に当てられて、璃汰の元気が倍になるかもしれない。