かわいい戦争
表情が硬い。
よく観察してみると顔色も普段より白い気がする。
「……もしかして、緊張してる?」
口をついて出た憶測。
図星と言わんばかりに璃汰と目がかち合った。
「緊張……するに決まってるでしょ。デビューイベントなのよ?」
「自分で観に来いっつったくせによ。だっせー」
「黙れ」
「黙ろっか~?」
「リッキー、黙って」
勇祐くんと未來くんとひつじくんが同時に天兒さんを殴った。
天兒さんは痛がりはしないものの舌打ちをこぼす。
「そうだよね。念願のデビューだもんね」
「ええ」
「イベントに来たお客さん、この日をずっと待ちわびてたみたいだった。皆、楽しみにしてたよ」
椅子に座る璃汰と目線を合わせるようにしゃがむ。
片方外れたイヤホンからは、このあと披露するデビュー曲がうっすら聴こえてきた。
「SNSでも盛り上がってたし、クラスの友達も私たちも今日を待ち焦がれてた。あと、お父さんとお母さんも」
「え……?」
「お店があって来れなかったけど、“リタ”のこと応援してるって」
今では家でも普通にリタの話ができる。
リタのことを熱弁しているうちに、お父さんとお母さんもファンになっちゃったくらい。
昨日お店に来た剛さんと幸珀さんもイベントに誘ってみたけど、今日は仕事があるらしくて『自分たちの分も楽しんできて』と託された。