かわいい戦争
待って!
わたしをホールドしたまま口論を始めないで!
戸惑っていたら、また誰かに左腕を引っ張られた。
チョーカーの鈴モチーフのアクセサリーが揺らめく。
「璃汰!?」
あ、もしかして助けてくれたの?
「ダメよ、渡さないわ」
「……はひ?」
「この子はあたしの親友なのよ」
右半分は未來くん、左半分は璃汰に独占される。
璃汰!ここで張り合わなくてもいいよ!!
未來くんも!璃汰にヤキモチ妬かないで!!
脳内はパニック状態。
照れたらいいのかすらわからない。
なのに……どうしてかな。
不思議と笑顔になる。
愛されてるのは璃汰だけじゃなかった。
わたしも
こんなに愛されてる。
「大好き」で満ちている。
すると、ノックが響いた。
扉からスタッフが顔を出す。
予想以上にお客さんが押し寄せたことで、イベント開始時間を30分早めるらしい。
「……出番ね」
「客席から観てるね!」
鏡を見て最終チェックをしたあと、璃汰は優しく目尻を細めた。