かわいい戦争
◇
《繰り返し放送いたします。イベント開始時間を変更し、5分後に開始いたします》
控室をあとにしてステージ前に戻ってきた。
人の数が増えてる。
前方なんか特にお客さんがぎゅうぎゅう詰めだ。
アナウンスを聞いて、ちらほらとピンクの光がきらめき出す。
ひとつひとつじゃちっぽけな光も、あっという間に大きな輝きになる。
リタの色で埋め尽くされる。
ステージの奥に流れていた映像が切り替わった。
『リタ、デビュー記念イベント』
撮りおろしのリタの写真。
上のほうにわかりやすく記された文字。
デビュー曲のイントロが奏で始めた途端、お客さんのボルテージが急上昇する。
「皆ー!!」
「うわああああ!!」
「うおおおおお!!」
満を持してリタがスカートをひるがえして登場した。
四方八方から歓声が沸きあがる。
「今日はあたし・リタのデビューイベントに来てくれてありがとう!最後まで楽しんでいってね!」
わたしたちのいるところはステージからかなり遠いけれど、璃汰の勇姿はよく見えるよ。
今日も、あの子の世界は、“かわいい”であふれてる。
「それでは早速聴いてください」
イベントの始めはトークショーじゃないんだ。
初っ端からライブで盛り上げていく。
それは強気な戦闘スタイルのようにも感じた。
あぁ、ほら。
璃汰自身も強くきらめいてる。
「デビュー曲、『かわいい戦争』」