かわいい戦争



4月下旬でも、一か所にあそこまで大勢集まっていたら、人口密度の熱気でさすがに暑くなってしまう。


マスクが蒸れて気持ち悪い。



だけど、このマスクを取るわけにはいかない。

これはわたしにとって、大事な仮面なんだから。




背中越しに好奇心と熱狂を感じながら、繁華街の大通りを突き進んでいく。



制服姿をよく見かけるのもいつものこと。


放課後遊んでるの、いいな。
とは思うけど、思うだけ。

遊びよりもやりたいことがある、だけ。



「……あれ?」



慣れてきた帰り道をたどるわたしとすれ違った、小柄な男の子が不意に振り返る。


見据える先は、わたしの後ろ姿。




「どうした?」


「いや、あいつに似た子を見かけてさ」


「ふーん?」


「でも見間違いだったかも」




なんか誰かに見られてるような……。

はは、まさかね。



キョロキョロ見渡すような野暮なことはせず、なんてことないように繁華街のとある店に入った。



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