かわいい戦争
言いよどむ璃汰は、嫌そうに唇を尖らせる。
そんな顔してもだーめ。
かわいいだけだよ。
もう1回「ね?」と念を押すと、観念したように唇がゆるく曲がった。
右へ左へ泳いだ眼に、恐る恐る男の子4人を映す。
「……あ、ありがとう」
ボソボソと呟き、照れ臭そうにする姿が新鮮で。
今までの恐怖が全部吹っ飛んだ。
「わざわざ来てやったんだ。もっと感謝しろよ」
「……こうなるから言いたくなかったのに」
えらぶる高身長の男の子のせいで、その新鮮な姿が一瞬にして終わってしまった。
もう少し照れてるところ見たかったのにな。
なんてガッカリしていると。
「んん?」
不意にひとつの眼差しが、わたしを捕まえた。
「え?」
「お前さ」
漆黒の目。
高身長の男の子だ。
「さっきと顔違くね?」
すっかり緊張が解けて安心しきった心を、明後日の方向からぶん殴られたような衝撃が落雷した。
やばい。
やばい……!
今マスクしてないし、汗と雨でメイク取れてるし。
とにかくやばい!!
わたしの“かわいい”が溶けてなくなってしまった顔を、この男の子に見られてしまったら。
確実にバカにされて、からかわれる!!