かわいい戦争
わたしが璃汰のものでいる限り。
「その子はあたしのものよ」
「……は?」
「あたしのものに、手を出さないで」
高身長の男の子の視線が、わたしの横へなぞられる。
彼をじっと見据えたまま逸らさない璃汰は、心なしかイラついてる。
わたしとは違う。
雨が降ってもかわいく在り続けられる璃汰は、本物。
「こいつが、お前のもの?」
オウム返しすれば、フッ、と噴き出した。
「あーひゃっひゃっひゃっ」
独特な笑い方するなぁ。
ていうか今のどこがツボに入ったんだろう。
この人はどこまでも読めない。
苦虫を嚙み潰したような形相の低身長の男の子が、高身長の男の子の足を勢いよく踏んづけ、笑い声と一緒に握力も弱まった。
そのうちにそうっと手を引き抜く。
低身長の男の子に文句を吐き捨て、また、わたしを射抜いた。
「なおさらおもしれーじゃねぇか」
ゾクッと悪寒がした。
恐怖と似て非なる感覚が押し寄せる。
何が面白いの!?
何も面白くないよ!
彼の考えは全く想像つかないけど、これだけはわかる。
この人に目をつけられたら、はちゃめちゃなことになる。
心の中も頭の中もパニックに陥っていると、誰かがこちらに何かを投げてきた。
反射的に受け取れば。
その何かは、ぐっしょり湿ったわたしのスクールバックで。
「あなた、お店があるでしょ。さっさと帰りなさいよ」
投げたのは、璃汰だった。