かわいい戦争
「クラスメイトなんだからもうちょっとラフに行こうよ。ね、海鈴ちゃんもそう思うでしょー?」
「えっ、下の名前、カイリちゃんっていうんだっけ?めっちゃかわいいね!?」
「わかる!あたしも最初思った!漢字もさ、海に鈴って!おしゃれかよ!」
「名は体を表すっていうけど……まさにそれだわ」
あ、あれ?今日は褒められっぱなしだぞ?
わたし、一生分のいいことをここで使ってない?大丈夫?
「きょ、恐縮、です……」
普段あんまり褒められ慣れていないから、どぎまぎしてしまう。
素野 海鈴。
わたしの名前。
自分でも気に入ってるから、かわいいって言われて嬉しいな。
「名は体を表すって言ったって、海鈴ちゃんの顔、半分隠れてんじゃん」
「でも、こう、わかんない?マスクしてても雰囲気あるじゃん。最近話題のあの子に似てる!激似!!ほらっ、もうすぐデビューするあのアイドルの!」
「あー、あの子ね。確かに似てるかも。海鈴ちゃん、メイクもちょっとしてるよね?めっかわ」
「……あ、ありがとう……っ」
「ふはっ、どんだけ照れるのさ!」
「反応もかわいいとか、やめて、ずるいー」
この子たちは、いい人すぎるんじゃないだろうか。
お世辞じゃなく心からそう言ってくれてるのが、なんとなくわかるから、余計にどうリアクションするのが正解かわからなくて戸惑う。
マスクをしていて助かった。
この赤面がバレずに済む。