かわいい戦争
ややつり目がちな目元をアイライナーで垂れさせて。
ビューラーでまつ毛を上げ、マスカラをつけ、目をぱっちり大きくさせる。
「うん、いい感じ」
もうこの時点で全然違う。
ブスなわたしはもういない。
潰れた山のような鼻は、ノーズシャドウで影を描きぼかすことで、まあまあマシな鼻に見える。騙し絵みたいな感じ。
同じ感覚でシェーディングもする。頬骨と輪郭にも影を入れ、小顔効果。
マスクで覆われるとしても、油断大敵。
一応メイクはしておく。
ハイライトも忘れずに。
コーラルピンクのチークをうっすらつけて。
璃汰と同じ赤リップを、やぼったい唇に塗っていく。
「最後に……」
これ!
カラコン!!
茶色い小さな瞳に、ダークブラウンの薄いカラコンを入れたら、キラキラしたつぶらな瞳の完成。
「人気急上昇のアイドル・リタ風メイクのできあがりっ!」
メイクしても、この横長でまん丸な骨格を完全にはごまかしきれてないから……マスク!マスクしなくちゃ!
マスクを装着し、ルーティーン終了。
ちなみに青緑色のスカジャンも、マスク同様、ぽっちゃり体型を勘ぐられないための必須アイテムだ。
マスクとスカジャン。
どっちも大きめなサイズ感が、何もかも忍ばせてちょうどいいんだよね。
鏡にはちゃんと“かわいい”が実在してる。
「今日のわたしも、かわいい!写真加工アプリで撮ったら、絶対もっとかわいく詐欺れる!あ、でも……顔やせ、もっと頑張らないとなぁ……」
あ、あと体型も。
これでも昔と比べたら痩せたほうなんだけど。
特に足。
ひざ丈のスカートを履いてもどうしても見えてしまう箇所だから、少しでも細くなるように努力した。