かわいい戦争




「どこで買ったの?」


「これはお父さんのおさがりなの」


「えっ、お父さんの!?」


「そこは彼氏じゃないんだ」


「か、彼氏なんて!そんな、いないよ……!」




思わず両手を振って全否定すれば、持っていたホウキを落としてしまった。


さっきから勘違いのオンパレードだ。

今回は訂正したけど。
いやだって、しないとまずいし。



「海鈴ちゃん、彼氏いないの?嘘だぁー」


「残念ながら本当なの」


「こんなかわいい子ほっとくなんて、男どもは見る目ないねぇ」



いや、逆に見る目があるんじゃないかな。


だって、わたしは――。




ピコンッ。

不意に、通知音が鳴った。




気になって、新着メッセージをチェックしてみる。



『明日お弁当作って』



……あの子からか。


たった一言のわがままは、いつものこと。



『了解しました、お姫さま』



なんで、とは聞かない。

聞いても意味がない。


あの子ために尽くすのが、わたしの使命のようなものだから。




「彼氏から?」


「だから彼氏なんていないってば」


「じゃあ好きな人だ!」


「えぇ、なんで?違うよ?」



違うからね?
と、一応念を押してみたけれど、効果があったかは不明だ。


だってずっとニヤニヤしてるんだもん。


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