かわいい戦争


天兒さんは丼ぶりを上げてスープを飲み干すと、足を大きく広げ、片方の口角を引き上げる。



「何の宣伝か知らねぇが、やりたきゃ勝手にやれよ」



面白いものでも見たそうな、好奇心一色の視線。


せっかくの綺麗な瞳が、なぜか急に汚く見えてくる。



しばらく天兒さんを睨んだあと、璃汰はマスクを外してホールの真ん中へ移った。


さすが璃汰。

彼に物怖じしてない。




「海鈴もいてちょうどよかったわ。来週の日曜日に『オンナノコ*ソルジャー』のライブがあるの。グループメンバーとしては最後のライブよ」


「璃汰の卒業ライブ?」


「そう。だから会場もいつもより大きめで、盛大に行われる予定なの」


「行きたい!」


「そう言うと思って、チケットをあげに来てあげたのよ。海鈴にはここ寄ったあとにお店に行ってチケット渡そうと思ってたけど……まさかここにいるなんてね」




チケット1枚と、「ついでに、はいこれ」とお弁当箱を返却された。


メジャーデビュー前の、リタのラストライブ。

これは何が何でも行くしかない!



インディーズアイドルとしては熱狂的な人気を誇る「オンナノコ*ソルジャー」は、メンバーの加入や卒業のあるグループで、メンバーが卒業する度にこのように盛大なライブをしてきた。


だが、リタの人気は別格。


そんなリタの卒業ライブだ。

おそらく、今までにないくらいビックイベントになる。


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