かわいい戦争
「へぇ~、ライブか~」
「りったんのライブ、絶対行く」
「けっ、めんどくせー」
「そう言うなって。どうせ暇だろ?見届けに行ってやろうぜ!」
璃汰は彼らにもチケットを配り終えると、いつの間にか平らげていた丼ぶりを回収してくれた。
「あくまで宣伝だから、嫌なら来なくたっていいわよ。あたしの最高にかわいい姿、見なくてもいいなら、ね」
今、ここに
目の前に
リタがいる。
とってもかわいい笑顔でウインクをする、キラキラなアイドルが。
「あーひゃっひゃっひゃっ」
相変わらず天兒さんは独特な笑い方をする。
魔王みたい。
高らかに笑い声を響かせれば、今度は形のいい唇でゆるり、弧を描く。
「……いいねぇ」
何だろう。
璃汰と天兒さんの間に、なんだか、不思議な波長が流れる気がする。
どこか似ていて、わたしなんかじゃ手の届かないような、遥か高み同士の世界。
「ただ俺は、自信過剰に睨み返す奴より、怯えて嫌がってる奴のほうがそそるけど」
「変態かよ」
「なんか言ったか」
「いんや別に?」
勇祐くん、口笛下手すぎる。
あれじゃバレちゃうよ。
そんな勇祐くんを横目に、羽のタトゥーが刻まれた左手でひらひらとチケットを揺らした。
「まあ今回は特別に行ってやるよ。その『最高にかわいい姿』ってやつを、俺様が直々に見定めてやる」
「あらどうも。素人の見定めなんて興味ないけど。観に来てくれるなら、ファンサしてあげてもいいわよ?」