belief is all 『信念がすべてさ』
(こんな田舎町に埋もれたままでいられるか、何のために学校を飛び出して社会を選んだんだ、俺はいつか必ず成功者になる、このギターを使って書いた曲を売り込んで大金持ち、印税で暮らすのさ‥)
ビッグマンを夢見るなんて云うのは、シンガー矢沢永吉の自伝書『成りあがり』を読んだこの頃の典型的な不良少年の傾向で、それは馬鹿野郎どものそれぞれのサクセス・ドリームに第一歩を踏み出させた。そう、皆が皆矢沢に成りきり、広島から単身上京し極貧の中から成功を手に入れる、彼の人生の軌跡を我も実施しようと夢を見た‥。
人生ゲームのルーレットを回させてくれたのさ。
だが皆、中盤を迎える前にゲームを降りてしまう。何もなかった様に又元通りになってしまった。そして変わらぬ空気の中で、変わらぬ仲間と、変わらぬ町で、また同じように工場に向かうバスに乗り込んで行く。俺は仲間と乗るバスの吊革に掴まりながら窓の景色を眺めていた。ここに居るのは何かが違うと感じていた。
次のドアを開けてみたかった。この向こうには何があるんだろう。この向こうには誰がいるんだろう。そして、どんなふうにドアは開くんだろう‥‥。
次第に俺だけが一人変っていった‥‥。
「シノブ、又ラリラリかあ?シンナー臭せえと思ったら又アンパン食ってたのか?」
「食ってんじゃないの、吸ってんの、ぎゃはははは」
「ヒロ死んだぜ‥‥。おい聞いてんのかよ」
「‥‥‥‥‥」
「単車でドン、後続車と接触してさ、飛ばされたのさ、地面で頭パックリさ、脳味噌出てさ、プロムナードまで真っ赤っかさ、それでさ‥」
「キングダムの親父がそれを舐めたのっさ」
「何だよ、知ってたのか‥‥」