belief is all 『信念がすべてさ』
 その頃俺は『全ての物には魂がある』と考え、不思議に起こる出来事を信用する思いを決定付けるある出来事に遭遇した。
 深夜アパートの部屋で一人飲んでいて、そろそろ休もうと目に入れたコンタクトレンズを台所で外した時、指先で跳ねたレンズは足元へ落下し、口を縛らぬままゴミの一杯入った大きなゴミ袋の中へ落ちて行った。
「まいったなあ‥」
明かりを点けてゴミの中を見るが一向に発見出来そうに無い。生ゴミやら何やら汚くて凄い有り様になっている。腹を決めた俺は新聞紙を広げ、袋の中から一つずつのゴミを手にとって念入りに調べながら探して行った。見つからなくても悔いが残らない様に念入りに調べたが全く出てこなかった。袋の中のゴミはあともう少し、その時ゴミにまみれて一膳の菜箸が出てきた。割箸と間違えて捨ててしまったのだろう。その時、
『よく洗って謝ればレンズが出てくる‥‥』
と、心の中にそんな声のようなものが聞こえた。
(まさかねえ‥‥)
馬鹿馬鹿しいと思うがその通り、奇麗に洗って拭いて手を合わせ、
「うっかり捨ててしまって申し訳ありませんでした」
と、よく謝った。そして残りのゴミを調べて袋の中は空になった。
(ほらね、そんな訳ないじゃん)
諦めて床に広がったゴミの山を袋に戻そうとしたその時、さっき確かに調べた空箱の先端に、取って付けた様にコンタクトレンズが付いていた。
 俺は不思議さにボーッとしてしまった。
 素晴らしい体験だった‥‥。
 不思議な事があって、俺は『物の魂』や『天の声』みたいな事を信じるようになる。


 こんな事もある。
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