belief is all 『信念がすべてさ』

　深夜テーブルで酩酊していた俺は又、声の様なものを聞く。
『願い事を四つ言いなさい‥‥』
すっかり酔って眠くて仕方がないのだが、それはそれなりに一生懸命考えて、
「一、コンクールで全国のタイトルを取りたい‥」
「二、まだ金持ちになった事がないので一度くらいはなってみたい‥」
「三、家族が幸せに暮らせますように‥」
「四、世界の人々も幸せになれますように‥」
こう願った。
　四の「世界の人々も‥」と云う所がなかなか良い。
　そんな話も無いだろうが、本当に天の声で叶えてくれるのなら、最後は世界の人々の幸せの為に、そう、他人の幸せのために力を尽くしたい。

　人生はそこまでを望むのなら余りに短すぎる‥‥。

　厳しさで名の通った親方がいるある有名バーに運良く紹介で入店するが、そこでは今迄のチーフ・バーテンダーとしての職歴や競技会への出場歴等そんな物は一切関係ない。俺はペエペエも同然、いやそれ以下で扱われ、カクテルも当初全く作らせて貰えなかった。まるで軍隊の様な厳しさに惚れ惚れし、毎日毎日泣かされながら
（これこそ修業だぜ‥）
キツイなんてちっとも思わなかった。

　随分沢山の店で働いた。行く先々で色々な経営者や先輩、同僚、又後輩達に会い、バーの内面もその形態の様々を経験した。
　バブル経済が膨らんでいた頃、求人募集誌に何ぺ－ジもあった『バーテンダー募集、高給優遇』の広告も夢だったかの様に無くなり、俺も深刻な就職難に遭遇していた。
　働きたくても何処も取ってくれない、希に募集に逢えても
「貴方ほどの経験者はもったいなくて‥」
経験の長い中堅以上の応募者だと要するに人件費が出せない訳だ。
「ビギナーと同じ給料でいいんですけど‥」
そう言っても取り合って貰えない。
　何処でも行った、カウンターに立てるのならスナックにでも、数日だけのヘルパーでも何でも出向いた。