belief is all 『信念がすべてさ』
 バーテンダー募集店を探しながらハンバーガー・ショップのアルバイトで食い扶持を繋いでいたがどうにもこうにもならず、バーテンダーの組織で既に池袋の代表者を務めていた俺は、フライド・ポテトを揚げるフライヤーの横の電話で地区のバー店舗に指示を出し、又伝達を受けていた。受け取りの書類等を届けに来られると、ファースト・フード店のユニホーム姿の俺を見ていつも唖然とされた。
 若い男女や子供達でにぎわう店を深夜清掃しながら窓の外を行く車のヘッドライトを眺めていたら、バー・カウンターに立って働きたい自分の思いは叶わず、
(このままハンバーガー屋のお兄さんになっていくのかな‥)
(カクテルに取り組んだ思いや、競技会に賭けた情熱は何だったんだろう‥‥)

 涙がにじんだ。

「池袋で潰れたバーの店舗が物件に出ているがやってみないか」
ひょんな話が舞い込んで来る。が、今迄一所に長く勤めない勤務バーテンダーだった俺に自己資金など有る由もなかった。
(この街で出来るのなら何としてもやりたい)
そうは思うが先立つ物の問題だ。
 最小限必要な資金を調達するため必死の借入れを行なう。が、現実は厳しく当然そんな虫のいい申し出がすんなり上手く通る訳がない。どのくらいの利益が算出でき、又返済していけると目安の立つ綿密な書類を税理事務所の手を借りて仕上げた。
(しかしこんな書類何の保障にもならないよな。どうとでも作れるよな‥)
「金は貸せない」
それが最初の返答だった。
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