belief is all 『信念がすべてさ』
 ある明け方、足元も覚束ない有り様で俺は行きつけの店に入った。
「イラッシャイマセー、ドーゾ」
出てきた薄い酒に口を付けテーブルに顔を伏せる。
「ハンさん、餃子ちょうだいよ。ジャオズ、イーフン‥‥うー」
「ハイ、ギョーザーネ」
「うーっ‥ハンさん今度上海にはいつ帰るんだい?俺も連れてってくれよ、上海でカクテル教室やっちゃうよーハハハハー」
「??大伴, 知道的,我 点菜以外的日本語不太精通,今天大伴 喝醉了」
「うんうん‥‥ハンさん上海はいい処だろうね、ねえハンさん‥‥」
「??大伴, 今天在什 地方喝的酒? 看 醉的!在店里睡着了就麻煩了」
「餃子‥‥ジャオズー‥‥うー‥‥」
「明天来付銭 ,回家睡覚 !走了,走了」
「ハンさん、あんた本当にいい奴だなあ‥‥‥‥うー‥‥」
「??大伴, 什 喝得那 醉?要多珍惜自己 」
「ハンさん、ずっと友達でいようぜ、う‥うーうん、うん‥‥」


 瞳を閉じると故郷の大きな湖が浮かんで見える。
 切なく美しい朝焼けの水辺‥‥。

(金網越しに見た父親の顔‥‥破壊思想の親父‥‥いなくなった母親‥‥やっと幸せを手にしたお袋‥‥死んでいったダチ公‥‥親不孝ども‥‥古い仲間達‥‥400ccの青い単車‥‥シンナー、純トロ‥‥飯をおごってくれたポリス‥‥大音量の軍歌と街宣‥‥ロックミュージックと地下のスタジオ‥‥水だけで噛ったフランスパン‥‥ライヴハウス‥‥タムロした歌舞伎町‥‥去っていった仲間‥‥最下位から始めるカクテルコンペティション‥‥ハンバーガーと油の匂い‥‥孤独のバーマン‥‥リキュールベースのショートカクテル‥‥ゴールドメダル‥‥)

 人生は長い長いトンネルを微かに見える出口を目指し走り続ける様なもの。

 しかし、やがて近づいてきた出口の明かりは、次のトンネルの入口でしかなかった。

 俺が辿り着いた明かりも又、次のトンネルの入口へ繋がっているだけだった。

 そして又しても遠くに見える出口を見つけてしまったのさ。

 それらから俺は一体何を学んだのだろう。



『信念がすべてさ』


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