愛されプリンス½
「キャ~~~ッ!!プリンス~~~ッ!!」
そんな甲高い歓声に教室の外に視線をうつすと、グラウンドで、体育のサッカーをしている天王子の姿が見えた。
やっぱり天王子は目立つ。
ボールをドリブルして一気に敵のゴール前まで駆け上がった天王子は、そのままシュッと鮮やかにシュートを決めた。
ギャアアアアアア~ッ!!と女子の悲鳴がグランド中に響き渡る。
プリンスは運動しているとは思えない涼し気な笑顔で、そんなまわりの女子たちに手を振っている。
とても唐揚げ一つで私と言い争う小さい男には見えない。
あんな上品な笑顔しちゃって。
本当は口が悪くてわがままで、人によって態度を変えるそんな最低最悪なやつなのに。
あんな顔して笑わないくせに。
「……さん?村田さん!?」
「っえ?」
は、と自分を呼ぶ声に気付いて顔を上げれば、教壇から数学の鬼、こと白倉先生(36歳独身男性)が鋭い視線を私に向けていた。
メガネをゆっくりと持ち上げる。嫌味っぽい口調は彼の最大の特徴だ。
「村田さん?そんなよそ見をしているなんて、ここの単元はずいぶん余裕があるみたいですね?この問5の証明問題を解いていただけますか?」
ちょっと待て。まず問5が教科書の何ページなのかという所から教えてくれないか。