愛されプリンス½
「じゃぁ何でそんなに一花ちゃんに拘んの?」
「別に拘ってねーよ」
「ふーん?今だってそんな大切そうに抱えちゃってるけど?」
水川の言葉に、思わず天王子の顔を見た。気まずそうな顔をして、天王子がパッと私の肩から手を離す。
チッと舌打ちすると不機嫌そうに私を睨みつけて。
「こっち見んなブス」
なっ…
「前から思ってたけど女子に軽々しくブスとか言うのほんと止めた方がいいと思う!」
「うっせー。わめくなブス」
「ほらまたっ…」
「じゃ、決まりね?」
水川が私の手を引っ張って、無理やり立たせた。
だけど天王子みたいに強引で乱暴じゃない。
優しくて、あくまで紳士的。
「玲は心配しなくていーよ。俺と一花ちゃんで楽しんでくるからさ」
そしてニッコリ天王子に微笑みかけると、行こ、と軽く私の背を押し出入り口のドアに促した。
「…いいの?なんか天王子すっごい不機嫌そうだけど」
なぜかずっと、こっちを凄まじい眼力で睨みつけている。
コソッと水川に言うと、ふふ、とおかしそうに笑う水川。
「いーのいーの。アイツってほんと素直じゃないよねぇ」
「え?」
「笑っちゃうよ、ほんと」
屋上のドアから校舎の中に入る。
光が遮られた薄暗いスペースで、水川が私に向かって優しく微笑んだ。
「俺は賭けてんだ、一花ちゃんに」
「…は?」
「だから改めて、これからよろしくね?一花ちゃん」
そして「じゃ詳細は後で連絡するから~」とヒラヒラ手を振りながら階段を降りていく。
…うーん。やっぱり水川って、なんかつかめない男。