愛されプリンス½






いつも人前では、その完璧な笑顔を崩したことなんかないのに。



何でか、見たこともないような恐ろしい顔で私を睨みつけている。




思わず動きを止めた私とバッチリ視線がぶつかって。



ギュ、と天王子の眉間に皺が寄った。




「ねぇ玲くん!聞いてる~?」



そのとき、天王子の隣に座っていた華ちゃんがヒラヒラと奴の顔の前で手を振って、天王子はハッといつもの完璧な笑顔に戻り、さっと私から視線を逸らした。



「うん、聞いてるよ?」



な、何だったんだ今の…。



不審に思いつつ、今度こそ料理を取ろうと改めて手を伸ばした時だった。





「もうっ!
放置しないでよ~寂しいっ」




視界の端っこで、ギュッと華ちゃんが天王子に抱き着いた。




あ…





“昔っから女に触ると全身に蕁麻疹が出んだよ”




頭の中に、いつかの天王子の声が響く。




“俺は女アレルギーだ”






「は~なちゃんっ!玲ばっかズルいんですけど~?」




華ちゃんの隣に座っていた水川が、華ちゃんの肩をつかんで強引に自分の方へ抱き寄せる。



「ちょっとぉ~やめてよぉ~!私は玲くんがいいのっ!」


「うわっ、キッツ~」




華ちゃんのハッキリした物言いに皆が笑う。




…俯いた天王子の表情は見えない。




「ね、天の…」




ガタッ




私が声をかける前に、天王子は席を立ち早足で店の奥の方へ歩いていった。




…天王子……






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