愛されプリンス½
「…一花ちゃん?どうかした?」
樹くんが、心ここにあらずな私に気付いて顔を覗き込んでくる。
「あ、あー別に?なんでも…」
…ダメだ。
やっぱり気になる。
「樹くんごめん、ちょっとお手洗い行ってくる」
そう樹くんに断ってから、私も席を立った。
向かった先はトイレ。
周りに人がいないことを確認してから、男子トイレのドアの前に立ち耳をそばだてる。
「て、天王子…?いる?」
「……おえっ…ぐっ…」
って
吐いてる!?
「天王子っ!!」
そこが男子トイレということも忘れ思わずドアを開けると、洗面所に手をついた天王子が力なく俯いていた。
蛇口からは勢いよく水が流れ出ている。
「…なんだよ」
右手で口を拭った天王子が、不機嫌そうに前髪の隙間から私を睨みつけた。
「だ、大丈夫!?今吐いてっ…」
「ていうかここ男子トイレだけど?変態」
「そ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?
誰か呼んでこようか!?薬とかっ…」
トイレを出ていこうとした私の腕を、グイッと天王子がつかんだ。
弱っているはずなのに強い力。
「戻んの?」
「え…」
「アイツのとこ戻んの?」